インタビュー


『桑田さんのお仕事07/08〜魅惑のAVマリアージュ〜』には2007年リリースのシングル3枚の9曲に、原由子作品のコーラス参加曲や新曲をプラスした作品集のCDと、ソロツアーのファイナル公演のライヴDVDとがパッケージされている。ファンにとって嬉しい作品であるのは当然のことだが、こうしてまとまった形になることで、体温までもが伝わってくる人間味溢れる作品に仕上がった。彼が何を感じ、何を思って、音楽に臨んでいたのか。この1年間の彼と音楽との濃密な関わりの成果のすべてがここにある。

――DVDとCDを組み合わせた作品を作ろうと思ったのはどういうところからですか?

「ライヴDVDに関しては、スケジュールの関係もあって、そんなに数多く地方を回れなかったので、ライヴをお観せ出来なかった人達にも見てもらいたいなと。僕は本来、自分がやったライヴ映像を出すのはあまり好きじゃないんですよ。というのは非常に照れ臭いということもあって。そこは30年やってきても変わらないんですけど、今回、この作品が愛しく思えるのはバンドのメンバーとライヴのスタッフがすごく良かったからでしょうね。僕自身多少、歌を失敗してても、ギターを失敗してても、意外といい顔をしているような気がする(笑)。楽しい表情をしてるんですよ。自然体で臨めたし、音楽的で楽しかった。ソロ活動も5年ぶりだったので、撃つべき弾(楽曲)が充分にあったということも大きかった。ソロのオリジナル曲だけで構成出来たのは初めてなんじゃないかな。そういう意味でも記念碑的なライヴかなって」

――どの曲もリアルに届いてきました。『漫画ドリーム』も今の歌という感じでしたし。

「お客さんとの距離が近くに感じたライヴではありましたね。お客さんと遠投じゃなくて、近くでキャッチボールしてるような感じ。僕は演奏も含めて、『漫画ドリーム』は今回一番好きなんですよ。メンバーが淡々とやってくれてるんだけど、僕は自分で歌っていてもエクスタシーのようなものを感じられたし、とにかくライヴ全体が充実してましたね。今回のようにデジタルな映像をばっちり使って、コンピューターが作動している中で、あえて昔の瓦版じゃないけどアナログでシンプルなやりとりが出来たのは、とても新鮮で刺激的でありがたかった。しかも生ギター1本ではなくて、バンド形態でやってるところがとてもいいなと」

―― 一方、CDはオリジナルアルバムではないのですが、限りなくオリジナルアルバムに近い作品とも言えそうですね。

「こういう形にしたのは自分の我儘なんですけど、去年シングルCDを3枚作って、単純に言えば、いい感じのモノが9曲出来上がったんですよね。期間が1年間に集約されていて、同じスタジオでやっていて、ツアーと同じメンバーで作って、流れやこだわりとしては殆んどアルバム制作と一緒だったわけだし。あえてこのタイミングでまとめてみたくなっちゃったという。」

――でもオリジナルアルバムということではないわけですよね。

「ちょっと無責任な感じっていうのかな。オリジルアルバムって、ファンの方達にとっては新曲が沢山入っていなきゃ嫌だっていう考え方もあるだろうから、その意味ではちょっと今回のやつは違うかもしれないけど。ただ、僕はベスト盤的なものも好きで、人のベスト盤を聴くことや、自分のものをまとめて出すのも妙な言い方だけど、前向きに考えられる時があるんですよ。それをしょっちゅうやっちゃうと、顰蹙[ひんしゅく] を買うだろうし、おかしなことになるんですけど。ここ数年でもシングルのCDパッケージと共に、自分の曲が世の中的には消えて行っちゃったような感覚も少しあって。作った側としては何だかやるせないし、とても不憫なんですよ。自分の中ではカップリングの曲も、当然ものすごく大事なものですからね」

――こういう形でCDの中に曲が並んでみると、流れや繋がりもあって、すごく気持ち良く聴ける作品だなと思いました。

「この1年の活動が凝縮されてるし、音圧や音色的にも共通項はあるだろうし、オリジナルアルバムには限りなく近いとは思うんですよ。」

――新曲『DEAR MY FRIEND』はさりげない温かさを備えた名曲だと思うのですが、どんなきっかけで生まれた曲なんですか?

「この3月でソロワークスがひと段落するんですけど、卒業や旅立ちのシーズンでもあるので、春先に向けての「出逢いと別れ」のような曲をやってみたいなって。去年の春ぐらいにオーストラリアで作ったんですけど、かのティン・パン・アレー みたいなイメージもありました。ちょっと都会的な70年代前半的な感じ。とにかくこの曲に関しては自分の体温のままに自然にやってたことは覚えていますね」

――『ダーリン』で始まって、『明日晴れるかな』で終わるのもいい流れですが、曲順はどういう基準で決めたのですか?

「でもね、あんまり深く考えずに決めました。最近の私の志向として結果をあまり求めないことにしようと(笑)」

――桑田さんがコーラスで参加した原さんの『大好き! ハッピーエンド』が入っているのも嬉しいですが。

「これは僕も関わったんだけど、頭の中にすごく残る曲なんですよ。夫婦だから入れたってわけではなくて、あえてこのチャンスに原坊の曲を入れさせてもらいたかった。よくサザンのアルバムにも1曲、原坊の曲が入ってるんですけど、このアルバムにも、要は原坊の声が欲しかったという。非常に存在感の強い声ですからね」

――このCDを1枚の作品集として聴いた時に、桑田さんのルーツが素直に出ていながらも、今の時代の中で歌う必然性も感じさせる歌が揃っていると感じました。

「去年の最初から楽しく無理せずにやろうと思ったんですね。そうすると、自然と音楽性はルーツ的なものになっちゃうんでしょうね。ルーツにないもの、例えばプロディジーやレディオヘッドみたいな音楽をここでは無理してやってない(笑)。それが等身大で良かったし、お客さんにもわかり易かったのかなって」

――どの曲も人間味溢れていますよね。

「スタッフとメンバーが一定の時期を通じて同じ人達っていうのもあるんですけど、彼らの人となりや体温を感じながら作っていたので、それが聴いてくれる人にも伝わるんじゃないでしょうかね(笑)」

――この1年やってきて、ソロ活動の良さはどういうところにあると感じていますか?

「サザンはサザンの楽しさがあるんですが、ソロは課外授業的な楽しさがあるんですよ。「この季節だけは時間外でも店明けてますから」っていう(笑)。結局はバランスだと思うんですけどね。ソロも5年振りだったからタイミングが良かったし。これを毎年毎年やってると、私の場合どうしてもネタバレしちゃいますから(笑)。サザンがあるからこそ、ソロが美味しいのかなって。2007年のソロワークスは濃いものを作れた実感はあったし、芳醇というか、豊穣だったと思うので、今後、ソロをやっていく上でもいい意味で昨年の活動は貴重なサンプルになったと思いますね」

――FM全民放同時中継の石垣島でのライヴでソロワークスがひとしきりということになりますが、これはどんな感じでやろうと?

「僕から見ると、ラジオってお客さんとパーソナリティーが密航してる感じなんですよ。秘密の匂いがする。秘密というわりには全国ネットでやるんだけど(笑)、石垣島に密航する感じで、アコースティックを基本として、カバーもやりつつ、ラジオネタっぽく島民の方達が喜んでくれて、お互い気楽にやれればと思ってますね」

――そして6月にはサザンのメジャーデビュー30年という区切りの時期を迎えます。

「ここまでやれたことは本当にありがたいと思うし、お客さん、スタッフとお祭りみたいな感じで一緒に盛り上がりたいという気持ちもあるんですけど、かっこいい言い方をすれば、まだまだ途中経過という気持ちもあるんですよ。「メモリアル」も大切なんだけど、それ以降のことも大事に考えないとね。色々な意味合いで、今後の自分達に対して刺激になることはいったいどういう事なんだろうって考えてます。僕らがやりたいことで、尚かつお客さんが喜んでくれることって何だろうって。今、まさに思案中でございます」

ライター:長谷川誠氏


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